時間線の修復 2020 11 23

「結局、未来は変わらなかった」
 すべては、うまく行くはずだった。
しかし、今や、すべてがうまく行かなくった。
 明男は、そう思う日々が続いた。
2021年3月に大学を卒業して、4月からは社会人になるはずだった。
 大学2年生の時に、TOIECで730点を獲得して、
3年生の時には、第二外国語であるスペイン語に磨きをかけるために、
スペインへ短期留学、そして早くもインターンも経験した。
12月の時点では、友人たちよりも先行していると思っていた。
 年が明けて、2020年2月、
まさかと思える「新型コロナウイルスの流行」が事態を暗転させた。
 どうしても、ZOOMが苦手だ。
同期の連中は、ZOOMを使ってWeb面接を要領よく成功させた。
 周回遅れだった友人たちが次々と追い抜いて行った。
明男は、ZOOMの画面を見ると、声が出なくなってしまう。
頑張っても、小声になってしまう。
何度も聞き返される。
 いつしか、明男は、部屋に閉じこもりがちになる。
もう1か月も外出していない。
「フロントランナーだった俺が、今や落ちこぼれか」
「俺は、この世に生まれなければよかった」と思うようになった。
 父と母が出会わなければ、俺は生まれなかった。
だから、タイムマシンで過去に行って、
父と母のデートを邪魔すればいいんだ。
 1995年、世の中は、「Windows95」の登場で、
まるで、お祭りのように盛り上がっていた。
 テレビでは、発売日までカントダウンを放送していた。
パソコンショップの前には、深夜にもかかわらず、大行列となっていた。
 そんな騒動をよそに、父と母は、
いや未来の父と母は、のんびりとデートをしていた。
「そうか、親父もお袋も、パソコンが苦手だと、いつも言っていた」
 未来の父と母が駅前で別々に帰途についたときに、
俺は、未来の母の前に現れた。
 未来からやってきた俺は、あか抜けていた。
2020年でも「イケメン」と言われる俺が、
1995年の人に出会えば、まるで俳優のように見えた。
 「これで未来は変わる」と思い、
2020年11月に戻ってみると、
やはり、就職活動に苦悩する俺がいた。
 「なぜだ」と思い、「時間線」を調べてみると、
親父は、なんと母の妹と結婚していたのだ。
そして、1998年に俺は生まれていた。
これは「時間線」の修復機能だと言われた。
 「おっと、2時間も寝てしまった」
「変な夢を見た。結局、何も変わらないのか」
 久しぶりに、高校の仲間に会いたくなった。
そうだ、困った時には集まろうと、
卒業式の時に約束したのを忘れていた。
 一人で悩んでも解決しないが、
みんなで悩めば解決する。
 明男は、高校の仲間の助けで、
2022年4月、総合商社に入社した。
 しかし、2023年、風雲急を告げる国際情勢を見て、
「もしかすると、世界大戦が始まるかもしれない。
日本の未来は、どうなるのか。
資源の輸入は、どうなるのか」と悩んだ。
 しかし、「俺の悩みは大きくなった」と思った。
就職活動に悩んで、引きこもりになった俺が、うそのようだ。
 そこへ外電で速報が飛び込んできた。
「南シナ海で米貨物機墜落。中国機も。
親中派のホワイトハウスは対応に苦慮か」
























































































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